前回の続き
かなり走ったと思ったその時、再び、標識が見えた
すると、またしても「Worcester」の文字。
「おかしいよね。さっき通ったじゃない・・・」
「別の看板かもしれないよ。もうちょっと行ってみようよ」
「そうだね」
そしてさらに進むと、またしても同じ看板。
三人とも唖然として「一体どうなっているの?!」を連発するばかりだった。やがて、
「全然進んでないじゃないか・・・」と、Sは恐怖と苛立ちが入り混じったように顔を強張らせて言った。体中が汗ばんできた。
「でも、さっきから走っているのは、知っているでしょ。ほら、ガソリンだって減っているし」
「じゃ、どういうことなのよ」とM。ちょっと背筋が寒くなるような感じがした。
それから何度もその標識を見た。
そのうち、ガソリンがなくなってきた。
「このまま走っていったらガス欠だよ!」
でも、高速道路をこのまま走っていったらあぶない、とにかく、いったん出たほうがよさそうだ・・・」
「そうだね。95を出てローカルの1号線を北へ向かえば、海岸線とは逆側に出るから、少しは霧が避けられるだろう」とS。
私たちはガソリンのことだけではなく、頭のどこかで、このままでは危険だという勘を働かせていた。とにかく、うっすらと見える黄色い照明を頼りに、高速道路の出口らしいところを見つけることにした。
「もう勘で行くしかない」腹を括って前進した。
でも、視界がきかないので、対向車に追突するか、されたりする恐れはじゅうぶんにある。
かろうじて、見えた車の側面のガードレールに沿って、恐る恐る進んでみた。
海岸からかなり外れたとはいえ、まだ視界は悪かった。
そして、ガードレールが切れたところに、何かがうっすらと見えた気がした。
車を停止させた。
「ハイウェイから外れたから、とりあえず、危なくなさそうだ」
あたりはひっそりと静まり返っていた。
「この周辺だったら安全かもしれない。ここでしばらく待ってみるしかないねぇ」
狭い車の中で、しびれをきらした後部座席の二人は、なにやら喚き立てている。
「こんなところに停めたらあぶないじゃない」
「事故にあったらどうするの!」
「ガタガタ言ってもしょうがないでしょう。絶対無事に着くから静かにして!」
三人とも肉体的にも精神的にも力がなくなってしまった。疲労困憊だ。
ただ、実際、どこに車を止めているのかわからないので、眠ろうにも眠れない。
とりあえず、しばらくのあいだは、目を閉じて気持ちを落ち着けることにした。
沈黙が数分続いた後、重苦しい静寂が車を包んだ。
そのとき冷たい霧のような不可解な空気が、車内に流れ込んできた。
「なにこれ?」「気持ち悪い・・・」
Mが沈黙を破った瞬間、鳥の鳴き声が聞こえてきた。
ようやく霧が薄くなってきた。
時計の針は朝の4時を指している。
「あ、霧が晴れてきた!」
「本当だ。よかった・・・」全員そろって安堵のため息をもらした。
「もう少したったら、ハイウェイに戻れそうだね!」
やがて、霧が消えてあたりの景色がはっきりと見え始めた。
すると、車は魑魅魍魎とした一角にあるゲートの前に、ピタリと止まっていた。
続く